● 平 野 歩 夢 選 手 は 、 な ぜ オ リ ン ピ ッ ク で 優 勝 で き た の か
冬季オリンピック北京大会で印象に残ったアスリートに、
スノーボードの平野歩夢選手がいます。
彼は北京オリンピックのハーフパイプ決勝で、
2回目に素晴らしいパフォーマンスをしましたが、
なぜか低い点数をつけられてしまいました。
そして、その怒りをエネルギーにして、
次の最終演技でさらにとてつもないパフォーマンスを披露。
見事、金メダルを獲得したのです。
彼は、どのようにしてプレッシャーに打ち勝ったのでしょうか?
まず平野選手は、怒りの使い方が非常に上手で、
人への依存心もない印象がありました。
普通に考えると、低い点数をつけられたことで
「本当の力を見せつけてやる! 見ていろ、後悔させてやる!」
といった怒りを持つと、つい力んでしまうものです。
でも彼の場合、怒りはあったとは思いますが、シンプルに
「もっとがんばろう!」
という怒りがあったのではないでしょうか。
平野選手は精神的に「大人」であり、
他人からの批判に対する恐れを
あまり持っていない人のように映ります。
そのため、集中力が乱れるような怒りは
なかったのではないでしょうか。
「恐れ」のない怒りは、
パフォーマンスを上げるには有効なのです。
ただし、「恐怖心」が絡む怒りになると、
パフォーマンスがぐっと落ちます。

● 結 果 にこだわりながらも、とらわれないメンタルで金メダルを 獲 得
平野選手は大学で自分の技について、
「うまくいった場合といかなかった場合」
といった自身のメダル獲得への研究を行い、
卒業論文として提出したそうです。
プレッシャーに打ち勝つには、
このように冷静に自らを分析していくことも有効ですが、
一番のポイントは「恐れの感情が混ざっていないこと」です。
恐れの感情が混ざっていなければ、負けたときにも
「あ、負けたんだ」
という割り切った気持ちになり、勝ったときには
「勝ったぞ!」
と喜ぶことができます。
おそらく、結果にはこだわりながら、
結果ばかりにとらわれていないのでしょう。
こだわりはあってもとらわれていないので、
負けてもどうということもありません。
こうなると、
「結果が出なかったらどうしよう!」
という気持ちはほとんど持っておらず、結果が出なければ
「またがんばればいい」
と感じるだけのはずです。
平野選手は、
うまくいかなかったときの恐怖心やとらわれの気持ちを、
ほとんど持っていないのではないでしょうか。
銀メダルを二度獲ったあとに、
今回の金メダルを獲得した平野選手のメンタルは、
見事としか言えません。


