■自分の大切なものがダブルバインドにあらわれる
人の悩みで多く耳にするのは、ダブルバインドに関する内容です。
ダブルバインドついては、前回のコラムでもお伝えしましたが、「二重拘束」という葛藤状態のことです。
ダブルバインドの例にもさまざまなものがあります。
なかでも、代表例は「好きな人に告白したいけれど、できない」というケースです。
A:好きだから告白したい、彼女にしたい(ほしい欲求)
B:好きだからフラれてしまうのが怖い(なくす恐怖)
これが同時に起きて、永遠にループしている状態が、ダブルバインドなのです。
大切なものには「ほしい」「なくすのが怖い」という両方の思いがわきますよね。
このときの「なくすのが怖い」という気持ちは「不安」です。
これは決して悪いことではなく、大切なものをなくさないように、不安(=恐怖)が働くようになっているのです。
A:「大切だからほしい」=欲
B:「なくしたくない」=恐怖(不安)
人間はこれがセットで働くようになっています。
逆に「ほしいけれど、手に入らないならばそれでもいい」というものに対しては、じつは「あまり価値を感じていない」ということです。
ダブルバインドを客観的に見られるようになると、自分がいま「本当は何がほしいのか」が、わかるようになるでしょう。
そもそも、ダブルバインドは「いまの状態はダメだ」と思って悩んでいるときに陥る状態です。
ですから、「いまの状態でも正しいんだ」と気づけると、自然と悩みもなくなっていくのです。
「不安を消せない」という思いが苦しみになっている場合なら、「不安を満さなくてもいいんだ」と気づいて、受け入れられるようになるでしょう。
■自分が選択していることに気づこう
営業ができなかった営業マンの男性の例から、ダブルバインドを解消する流れを見ていきましょう。
彼は2つの悩みから、ダブルバインドに苦しんでいました。
A:成績を上げるために営業したい
B:断られて傷つくのが怖くてできない
A、Bを客観的に見て、共通していることを探していきます。
この人の場合「なぜ営業マンになりたかったか」を振り返ったところ、「自分に自信がないので、営業マンとして成績を上げて自信をつけようとしていた」ということがわかりました。
2つの悩みに共通している、彼が大切にしたいものは「自信」だとすると、
A:「営業成績を上げて、自信をつけたい」
B:「断られて、自信をなくすようなことをしたくない」このように、どちらも、正しく当てはまりますね。
セッションでは、ここから「なぜ自信がほしかったのか?」まで考えていきます。
すると、いまは自信がないから、自信をつけて「自分を成長させたい」と思っていたことがわかりました。
つまり、
A:営業で成長して、成績が上がることも正しい
B:うまくいかなくて傷つくことで成長することも正しい
ということに気づけたのです。
じつは、人間関係が苦手な人が、自分を成長させるために、あえて苦手な営業や接客を仕事に選んでいるケースは非常に多いもの。
苦手の克服が目的となると、できないことをしているわけですから、「営業」も「人間関係づくり」も間違いなく苦労をします。
でも、自分という存在を大切に考えているからこそ、自分を育むトレーニングのために、傷つくこと、苦労することを、自らあえて選択しているわけです。
「何かを克服したい」という欲求は、人間にとってそれほど強いものなのです。
彼は、本当に大切にしていることは「成長」だったのだと気づいたことで、「傷ついても、それでいいんだ」と思えるようになりました。
その結果、営業に出られるようになって、営業成績も150%以上になったそうです。
不安と同じように、ダブルバインドも本来は自分を守るためのものです。思考を俯瞰して見ることで、うまく扱えるようにしていきましょう。
そうすれば、自分が本当に大切にしていることに気づけるようになり、より人生が豊かになるはずです。